展覧会情報
2024年 開館90周年記念展 秋季の部
観古 ―いにしえをみる
概要
白鶴美術館は昭和6 (1931)年に白鶴酒造七代嘉納治兵衛(1862-1951)の寄贈品五百点をもとに設立され、同9(1934)年5月26日に開館。翌27日より一般公開が始まりました。以来、東洋古美術の優品を収蔵する美術館として、春・秋二回の展示を軸に活動を続けています。
今回の開館九〇周年記念展では、当館が所蔵する中国美術コレクションより50点の名品を展示いたします(展示替えあり)。展示室第一室(一階展示室)では、12点の重要文化財を含む、古代青銅器と唐時代銀器を、第二室(二階展示室)では、主に唐時代の鏡と宋時代・明時代の陶磁器、そして、第三室(二階東展示室では、仏教美術も陳列いたします。
製作された地域・時代を問わず、優れた作品は、観るものを惹きつける力を持っていますが、中国美術の精細で緻密な作品には、圧巻の造形力を感じるところです。是非この機会に当館が所蔵する珠玉の中国美術コレクションをご堪能ください。
主な展示品
-
四弁花文帯卣(しべんかもんたいゆう)殷時代 H.27cm
-
四弁花文帯卣(しべんかもんたいゆう)殷時代 H.27cm
把手(とって)には、大きな角をもった動物の頭か表され、蓋の摘みは蝉文繋ぎ、脚・蓋上と蓋直下の頸部には、帯状に連なる円文と花弁形文の反復が配される。ただ、装飾過多の中国古代青銅器のイメージとは異なり、シンプルさが際立つ。
蓋から身までひと続きのS字を描く輪郭線の流れるような器形は、その完成度の高さを感じさせる。下膨れ型は、西周時代にも多くみられる器形である。蓋と身の口との重なりは深く、密閉性のある造りとなっている。外気を遮断する保存機能を意識したものか。
蓋裏には4行44字にも亘る金文が記される。母を祀るために造られた青銅器である。
-
青磁浮牡丹文香炉(せいじうきぼたんもんこうろ)南宋時代 H.12.7cm D.19.5cm
-
青磁浮牡丹文香炉(せいじうきぼたんもんこうろ)南宋時代 H.12.7cm D.19.5cm
大振りでどっしりとした円筒形の香炉である。この器形は、漢時代の温酒器、尊(そん)を象ったもの。
型押しで作られた同形の牡丹文が四つ、細い蔓で繋いで配される。厚くかかった釉の下で、かかりが薄くなる凸線部が白くみえ、レリーフ状の文様が柔らかに表れる。底裏に見える胎は硬質で白い。この白さが全体にすっきりとした青磁釉の印象をもたらしているようだ。
奈良、法華寺の什物であったことが知られており、伝来時期は不明だが、長らく同寺の香炉として仏前を荘厳し、その役割を果たしていたのだろう。
-
勾玉(まがたま)古墳時代 H.6.1cm W.4.7cm
-
勾玉(まがたま)古墳時代 H.6.1cm W.4.7cm
頭に三本の刻みがある「丁字形」で、当館所蔵のなかで最も大きなもの。翡翠の色も深い。穿たれた穴は片面が4.0㎜弱、もう一方が6.5㎜強で、片側から段差なく貫通しているようだ。本体側面はよく研磨され、尾側の先端は特に滑らかな丸みをもつ。
勾玉は、紙と木を主とする日本文化において異質にも思える文化財だが、その原形は牙とも胎児の形ともされ、日本で発生した形状といわれる。明確な由来は判然としないが、原料である硬玉翡翠の産地も限られるようだ。元来、装身具として使用されたことは、墳墓や、埴輪などの人物表現からも裏付けられる。弥生時代後期から遺品がみられ、古墳時代に最盛期を迎えている。
-
重要文化財 金銅小幡(こんどうしょうばん)白鳳時代 H.39.9cm W.12.0cm
-
重要文化財 金銅小幡(こんどうしょうばん)白鳳時代 H.39.9cm W.12.0cm
-
国宝 賢愚経(けんぐきょう)甲巻奈良時代 H.27.5cm W.1324cm
-
国宝 賢愚経(けんぐきょう)甲巻奈良時代 H.27.5cm W.1324cm
-
四季花鳥図屏風(しきかちょうずびょうぶ)(左隻)狩野元信筆室町時代 各 H.162.4cm W.360.2cm
-
四季花鳥図屏風(しきかちょうずびょうぶ)(左隻)狩野元信筆室町時代 各 H.162.4cm W.360.2cm
-
扁額「観古」(へんがく かんこ)七代嘉納治兵衛筆昭和24(1949)年 H.39.7cm W.113.8cm
-
扁額「観古」(へんがく かんこ)七代嘉納治兵衛筆昭和24(1949)年 H.39.7cm W.113.8cm
当館創立者、嘉納治兵衛が八十八歳に揮毫した書である。同年に記された同じ表装の扁額があり、そちらは丸みのある書体で「楽静」の二字となっており、自邸に掛けられていたものだ。二つを比べると「観古」の勇壮な筆跡には、公的な場に掛かる書としての意識が窺われるように思う。
「古(いにしえ)を観る」とは、歴史を考察することを意味する。賀寿にあたり、この年の1月には最後の大きな自祝茶会が催され、5月には美術館の開館15周年記念として、「青磁・天目」展が行われている。美術思想普及のため、蒐集と展示活動を続けてきた古美術愛好家の人生において、この二字に託された想いの強さが窺われる。
展示期間:11月17日(日)~12月8日(日)