展覧会情報
2021年 秋季展
アナトリア・コーカサスの絨毯
概要
メダリオンとは、絨毯に表されるメダル形のことで、主に絨毯中央にひとつ大きく円形を表したものは、メダリオン絨毯と呼ばれており、ペルシア絨毯および、ペルシア絨毯に影響を受けたデザインとして広がった形式とみられています。
ただし、メダリオンは中央ひとつ置きのものだけではなく、複数のメダリオン(メダル形)を配した形式があり、特に、幾何学的な文様を得意とするアナトリアやコーカサスの絨毯では、多角形の多様なバリエーションがみられます。
今回は、アナトリア、コーカサスのメダル形デザインを中心にご紹介します。
主な展示品
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ヘレケ
アナトリア中央部20世紀後期 221×149㎝ -
ヘレケ アナトリア中央部20世紀後期 221×149㎝
ヘレケは1㎡あたりパイル糸100万本程度という緻密なシルク絨毯で知られている。宮廷工房のあった土地柄に相応しく、ペルシアの宮廷工房に影響を受けたデザインで、絨毯の画面中央にメダリオン(メダル形)を一つ置きし、ボーダーと呼ばれる額縁風の文様帯内側四隅に飾りを配した伝統的な形式―「メダリオン・アンド・コーナー」が多い。20世紀後期に製作されたこの作品も上記のタイプに属するもので、極めて優美で華やかな印象を与えている。但し、中央のメダリオンはセルジューク朝のモザイク・タイルにもみられる多角形(星形)を中心とし、俯瞰した花の繋ぎ文なども、多くのペルシア絨毯とは異なる印象がある。また、全体の画は薄い色は輸出先の欧米の好みを反映したものといわれ、様々な影響を受けて成立した近代アナトリア、工房絨毯の特徴のひとつが示されている。
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カザック カラチョフ コーカサス1900年頃 232×192㎝
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カザック カラチョフ コーカサス1900年頃 232×192㎝
大きな八角形のメダリオンを中央に配し、四隅に白地の四角形が表されており、カラチョフデザインの典型的な作品とされる。よどみのない白と赤の彩色の対比が見事であり、両者の間に青や緑、黄色などを入れてアクセントをつける。八角形と四角、星形と鍵形から構成される単純な文様構成であるが、よくみると中央のメダリオンの白地には小さな文字のような形象も見られる。
この絨毯はコーカサス地方のカラチョフで制作されたものであるが、カラチョフ絨毯は、トルコのチャナッカレやベルガマ一帯の絨毯に類似している。これらは「Large Pattern Holbeins(大きな図柄のホルバイン絨毯)」と呼ばれ、少なくとも15世紀には西洋の絵画中に描かれる。