今回の展示では主な所蔵品である中国美術工芸および日本の書画のなかから、動物が表現された美術品を展示いたします。
今から3000年以上前の殷・西周時代の青銅器には、眼力鋭い獣面や横向きの鳥などがよく表されます。それは特定の動物というよりも様々な動物を組み合わせた幻獣として描かれたものです。その後の美術にも、うねうねとした身体をもつ奇怪な動物たちや雲気をまとう神獣・幻獣たちの世界は思想とともに立ち現れるのです。唐時代に入るとそうした動物たちとともに、活き活きとした姿で描かれた現実の動物たちも中国美術を彩るようになります。当館の銀器はそうした描写に富んだ作品です。
辟邪(魔除けとなる霊獣)・天文・吉祥など、なんらかの意味を持つことの多い中国美術の霊獣たち―。本展では古代の幻獣や神獣、身近な動物たちなど、人びとが表してきた動物たちの造形を描かれた背景や目的とともにとらえてみたいと思います。
新館では中東絨毯に描かれた動物たちを紹介します。併せてご鑑賞ください。
西周時代 H.23.4cm × D.13.7cm
頭部には後ろに伸びる角のような突起があり、嘴は太く、丸い目と大きく垂れ下がる尾羽をもつ。頬に垂れる肉髯(にくぜん/肉垂(にくすい)とも)は鶏の類をイメージさせる。
卣・尊(いずれも祭祀用の酒器)などの禽獣形容器には、鴟鴞(しきょう:ふくろうのこと)形のものが多く、本作の類品は知られていない。但し、この鳥形は、概ね、中国古代青銅器において多用される鳥文である「虁鳳」(きほう)の特徴を示している。
この青銅器には、「大保鋳」の三字が鋳込まれている。「大保」は王の執政を助ける最高位のひとつで、西周王朝を支えた重臣として名高い、召公奭(しょうこうせき)とみなされている。
戦国時代 H.10.4cm、W.15.9 × 15.6cm
直角に開くL字型金具で、獣の頭部正面が中央となり左右対称に分かれている。用途としては、家具などの角(かど)に取り付けられる補強および装飾と考えられている。
獣の写実味に満ちた表現は、スキタイなどの文化的影響を受けたものいわれ、鋭利な爪と身構えるような脚部の表現は躍動感にあふれている。こうした活き活きとした動物の印象に反して、その翼と顎(あご)下に伸びた顎鬚(か?)の表現は装飾性が強い。また、湾曲した長い角や、アーモンド形に抜かれた眼と並びの良い歯は、草食動物である山羊の一種を思わせる造形を持つ。
20世紀初期 233 × 162㎝
フィールドは10本もの樹々と多くの花々で充たされた楽園の情景を表している。そして樹々の間では色彩豊かな鳥たちが飛び交うほか、獣たちが獲物を追いかけ捕らえる闘争の図が展開される。
古くから動物闘争文の図像は遺跡のレリーフなどに残されており、権力の象徴を意味する場合や、天体の動きになぞらえた季節の移ろいを表すものであった。例えば画面右寄りの中央部にて牛に襲い掛かるライオンの図像は、牡牛座を追う獅子座という星座の動きを表しているといえよう。
地色が青であるボーダーには蔓草のなかに鳥獣が配置されており、対峙するオオカミやシカ、鳥や豹が終わりなく永遠を感じさせるように反復している。
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