月曜休館 なお、10月9日月曜は開館、10月10日火曜日は休館日です。
白鶴コレクションより、中国の陶磁器を彩る植物文を中心に紹介をしながら、作品の特徴を捉えていく展示とします。
中国陶磁には吉祥を表す文様が数多く描かれます。常緑の松は長命を寿ぐ象徴として、描かれてきた図像でしょう。植物文のなかで柘榴や唐草文なども繁栄を願う文様です。その他、時代を超えて描かれてきた富貴な牡丹や清廉な蓮、清雅な文人を表す梅など。中国陶磁器の各作品から植物文様の装飾性とイメージをみていきます。
アナトリア絨毯の植物文といえば、チューリップやカーネーションが思い浮かびます。華やかな花文に加え、様々な花をつける生命樹が絨毯によく描かれる図像としてあげられますが、豊かな自然こそ、楽園の象徴です。絨毯に描かれた花文を中心に、生命力あふれる植物文を観察していきましょう。
唐時代 D.28.8cm
回転しつつ伸び広がる荷葉(かよう:蓮の葉のこと)にその生命力を感じる。蓮は仏教を象徴する聖なる植物だが、池に繁茂(はんも)する生態から繁殖力の象徴にもなっている。作品に描かれた蓮茎の間にみえる5つ瘤の文様は霊芝(れいし)。霊芝はキノコの一種で、中国において3世紀ごろには長寿の霊薬とされ、道教・仏教などの宗教美術において文様化し、そして吉祥文としても多用されるモティーフとなった。
唐三彩は墳墓に収められた副葬品として知られる。葬られた死者が生きる神聖な黄泉の世界が豊かであることを願った意匠だろうか。
南宋時代 H.12.7cm D.19.5cm
唐草文は、蔓草をモティーフとする汎用性の高い植物文である。中国だけでなく、世界各地にみられる形式で、様々な花文を主文にその周りをスクロールしながら繋がっていく。この香炉の胴部には、蔓草と型押しで成形された牡丹の花文と葉文が貼りつけられている。牡丹は宋時代から多用される花文で、その花弁の多さやずっしりとした姿形から、百花の王と称され、また富貴の象徴となってきた。この作品は奈良、法華寺伝来の香炉であるが、牡丹文は仏教における宝相華文と結びつき、仏具や仏画にもよく使用されるようになった花文である。
明時代 D.27.0 cm
中央の青い文様は松で、うねうねと幹が屈曲し、その外側に松葉が茂る。この幹が描き出そうとしているのは、「壽」の文字である。松は常緑のイメージから不老長寿を意味する文様となる。その外側には赤の文様帯で十六角の星形をなす。白地になった星の内側には瓔珞(ようらく:菩薩像などの胸元にある装身具)文が描かれ、そして、器の口縁には松・竹・梅が青で表されている。この三つの樹は、本来、「歳寒三友」(さいかんさんゆう:寒い冬に、鮮やかな緑をみせる松・竹や花をつける梅を清廉な理想の人物に例えたもの)を意味する植物文である。仏が身に着けた宝飾同様、清浄なるもの・聖なる理想の象徴が吉祥文として定着した例といえる。
1900年頃
アーチ形を中央に配したデザインを、ミフラーブ形と呼ぶが、ミフラーブはイスラームの宗教施設において、祈りを捧げる方角を知らせる目印のことである。この作品はアーチ形が柱によって三分割された三連ミフラーブの形式をとり、その中央にはロゼッタ(花を俯瞰した形)の繋ぎ文が配され、その下には水の象徴として、水差し(ポット)が描かれている。この宗教的なモティーフとともに描かれる植物文が担うのは宗教的な清浄さや豊かな天国のイメージであろう。
ボーダー(絨毯の外枠デザイン部分)には、ロゼッタ文とチューリップ文が交互に並ぶ。チューリップはアナトリア地域原産で、この地域の装飾文様として多用される植物文である。
19世紀初期
何重にも取り囲む細いボーダー(絨毯の主要画面を囲む枠部分)が特徴的なデザインであるが、ミフラーブ(アーチ)形の上には水色地のメダル型が置かれ、内側には放射状にのびるチューリップ文が描かれている。
ミフラーブの中央には赤いカーネーションが描かれ、またその周囲にも横向きのカーネーション文が並ぶ。外側のメインボーダー(絨毯の外枠デザイン部分)とミフラーブ下に表される文様は、三輪の花をつけたみえる植物文で、アナトリア東部シヴァスの絨毯にも同じ文様が表されているが、これもまたカーネーションをモティーフにしている。カーネーションは古くからイスラーム美術に描かれてきた花である。
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