展覧会

2020年 春季展

新館

「絹・羊毛・綿 ―中東絨毯の糸―

近代の中東絨毯では、画面を構成するパイル糸に羊毛あるいは絹が多く使用されています。すなわち「羊毛絨毯」といった場合、起毛したパイル糸が羊毛ということになりますが、そのパイル糸を支える下地は羊毛とは限らず、綿や絹の場合もあります。今回は、パイル糸だけでなく、経糸、緯糸の素材も挙げながら、各絨毯の特徴をみてみたいと思います。

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主な展示品

カーシャーン(マンチェスターカシャン)、ペルシア中央部

20世紀初期 348×263cm

「マンチェスター・カシャン」とは、1920年代、質の良いカーシャーン製の絨毯として有名で、英国、マンチェスター経由で輸入し、貯蔵されていたウールが使用されたものという。

このパイルの繊維は、細くシルクのような均質さを持ち、光沢のある深い色味がその特徴を引き立てている。また絨毯裏からみた織りも目が揃い、シルク絨毯に近い織りとなっている。ただこの絨毯の毛足は約1㎝とかなりのボリュームがあり、重いパイルを支える経糸(たていと)、緯糸(ぬきいと:よこ糸)には綿が使われている。

織りの密度は1メートルあたり、40万ノットに満たないが、画面に展開する草花文は優美に展開する。絨毯の大きさも理由のひとつではあるが、デザインと正確な織りによって生み出された繊細さといえる。

カーシャーン、 ペルシア中央部

1900年ごろ 200×125cm

この絨毯はパイル糸、経糸(たていと)、緯糸(ぬきいと:よこ糸)、ともにシルクが使われている。パイルの密度は高く、1㎡あたり71万ノット(パイル糸数)を超える。

ボーダー(中央画面を囲む枠)には草木を中心に向き合う鹿が配され、フィールド(中央の主画面)はミフラーブ(アーチ形)デザインに双樹文が描かれている。ミフラーブはイスラームの宗教施設に設けられた壁龕(へきがん:壁面に施された窪み)で、祈祷する方角を示す重要な目印である。宗教的な要素を含むこのアーチ形デザインには、宗教施設内をイメージするランプや柱、また花壺、生命樹や花鳥図などが組み合わされることが多い。偶像崇拝を禁ずるイスラームにおいてランプは光であり、神の象徴となる。

この作品では下方、左右の水辺と中央に置かれた花壺から延びる草木が、ミフラーブ内に広がる。光を反射して金色を呈する茶系のシルク・パイルが神秘的な印象を与えている。

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