展覧会

2020年 秋季展

新館

絨毯十色 ―jyutantoiro―

絨毯の画や文様は、染めたパイル糸を使って表わされています。古典的な近代中東絨毯において最も使われた色といえば、赤。続いて紺(青)・黄の三原色と白色が多く、中間色やピンクや水色などの薄い色の組み合わせは、欧米の好みが反映した工房絨毯に多いとされます。多くの色彩を適切に配色するのは表現技術のひとつですが、逆に数少ない色を有効に使うのも表現力のひとつといえるでしょう。
今回は、近代中東絨毯の色とその素材、配色構成に注目してみたいと思います。

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主な展示品

クチャン、ペルシア東部

20世紀中期

基本的に赤・紺・白という少ない色数で文様を描き出している。 紺地のフィールド(中央内側画面)には赤のメダリオン。さらにその内側中央は紺地の八角星形が置かれ、紺と赤の地を交互に配し、その区分を明確に分けるのが、白地の花繋ぎ文のマイナー・ボーダー(細枠部分)の役割となっている。

文様も境界を大胆に簡略化された白と紺を主とする花繋ぎ文が配されるが、これは17世紀の古典文様で、ロータス・パルメット文と繋ぎとなるアラベスク文の簡略形であることがわかる。

フィールドの地は下から、横線状の色変わり(アブラッシュ)として表れるのは、糸の使用と絨毯の織りの特性。やや緑がかった青と灰色系濃淡二種の三色が使用されている。

ザカタラ、コーカサス

1850年頃

パイルの毛足も15㎜程度と長く、曖昧になりがちな各モティーフを鮮やかで明快にみせているのは、約2m四方の大画面だけでなく、文様、織りや配色によるもの。

ボーダーの地を黒・黄・黒として明確な枠をつくり、フィールドの地色は青を中心に左右対称に赤・白と展開し、各境界線を黒で区切る。また多くの絨毯にみられるが、文様の輪郭に文様・地色と異なる色を配して地と文様の境界を際立たせる手法がみられる。

文様は両端が巻き込むフック型を対称に並べ、その内側中央に方形を組み合わせた形(「雄羊の角」)・「S」字フック形・「Z」字フック形、ボーダーには柄繋ぎの櫛形や星形が交互に配される。織り初めの両角で描かれる星形が白なのに対して、最後の星形が緑となっているように、反復・左右対称を基本としながら、文様・使用色など逸脱するものも多くみられ、織り手による制作の自由度が垣間見える。

タリッシュ、コーカサス

1900年頃

濃紺の中央部分(フィールド)、その縁に矢じり形の突起を配し、周縁(ボーダー)にロザッタ文(円花文)と四つの小四角形を組み合わせる。タリッシュ地方に典型的なメト・ハネと呼ばれる構図である。この絨毯は、特にフィールドの紺が極めて深い色をたたえ、層状に濃淡を重ねており、印象的である。敢えてここに文様を置かないことによって世界観に深みを持たせる。他の類例では、濃紺の中に一点の赤い菱形文様を置いたり、小さな四脚の動物を描いたりしており、確信的に青の空間の広がりを見せる効果を狙っていることが理解される。世界最大の湖であるカスピ海から着想を得たデザインであろうか。

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