展覧会

2018年 秋季展

本館

展覧会場で殷(商)・西周時代の青銅器の前に佇む時、私たちはそこに何を見て、それらをどのように感じ取るでしょうか。幸いにも白鶴美術館の青銅器は殷(商)周人が人類史上極めて卓越した造形力を発揮した傑作揃いですから、皆様が青銅器の精緻さ、そして奥深さを得心して下さる可能性はあると思います。中国古代青銅器は、エジプト文明、メソポタミア文明、エーゲ海文明などが生み出した金属工芸を始めとする古今東西の工芸美術を凌駕した、稀有の造形物なのです。どうして、3000年以上前の中国で造形力・鋳造技術が頂点を極めたのか、まさに謎に満ち満ちています。人類史上、唯一誕生から現在まで逞しく生き続けている文字、漢字を生み出した殷(商)人の構想力にそのヒントがあるのかもしれません。勿論、それを解き明かすことは至難の業でしょうけれども、まず居並ぶ青銅器の立体造形としての素晴らしさを味わって下さいますならば幸いです。そして、器面上に表された、饕餮文を始めとする鬼神を彷彿とさせる霊獣文様が語り掛けて来る精神世界に肉薄して参りましょう。

なお、今年は唐王朝(618~907年)建国1400年の節目の年に当たります。小さな展示スペースではございますが、銀器・鏡など珠玉の唐時代工芸作品をご覧戴きます。殷周青銅器と何ら遜色のない金属工芸の粋をご堪能下さいますならば嬉しく存じます。

主な展示品

重要文化財 饕餮夔龍文方卣(とうてつきりゅうもんほうゆう)

中国 殷時代 通高39.2㎝ 口径11.4㎝
伝 河南省安陽殷墟出土 

複雑な立体造形を極めて自然に仕上げる殷時代青銅器の代表作品。下方が方形で上方に行くに従って円形へと変化していっており、器全体で円い天と四角の地を表し、一つの世界を形作る。

提梁(持ち手)は、蛇身の胴に有角の犠首を両下端につけた虺龍の形象をとり、天から下った龍形双頭の獣として表現され、それが虹の文字に通じると捉えられることもある。蓋には四体の饕餮が頭を下にして描かれ、その上に別鋳の板状の夔龍、そして鳥が取り付けられ、当に天界を視覚化しているかのようである。一方、身には、頸部に饕餮文、肩部に鳥文がそれぞれ施され、胴部には四隅を正面としてそれぞれに羊の角を持ち、浮彫り風に前面に大きく突出した雄渾な饕餮文が鋳出される。そして圏台には夔鳳が向き合う様子で現れている。こうした文様のうち、胴部の饕餮文以外の文様は、平彫り風に表すことを基本としており、中心となる饕餮との間に存在感の差が生み出されている。殷墟の王墓からの出土品とする説も提出されるに足る出来栄えである。

祭祀の際に酒を入れる器として用いられた。なお、蓋裏と器内壁には、二字の銘がある。

重要文化財 象頭兕觥(ぞうとうじこう)

中国 商(殷)時代

(本館所蔵品紹介頁http://www.hakutsuru-museum.org/collection/ 参照)

饕餮文斝(とうてつもんか)

中国 殷(商)時代 通高22.2cm 口径14.6cm
伝 河南省安陽出土

ふっくらした胴に尖った三脚、鋬(はん)と呼ばれる把手をもち、やや反った口縁に、上部が傘状になった二柱を設けた温酒用の器と考えられる。注ぎ口がなく、勺(しゃく)などで汲んでお酒を供したものだろう。自らその銘文中に器名を明らかにする、いわゆる自銘の器はないが、甲骨文や金文に見える「斝」字に比定された2本の傘を開けたような柱状突起が、実際の青銅器の形状と合致するので、この青銅器が斝であることは間違いないと思われる。商(殷)中期の平底に始まり、商(殷)後期の安陽からの出土例が多いが、西周時代にはほとんど作られなくなる。

胴部中央の主要な文様は、円周を三等分した三ヶ所にある低い稜をそれぞれ鼻筋と看做した、左右に胴、足、尾を持つ饕餮文で、その上段に夔龍文(きりゅうもん)があり、両文様とも主文と地の雷文はほぼ同じ高さで一見平面的であるが、浅いながら明瞭に施文され、ひきしまった重厚感のある青銅器である。

把手(鋬、上部は水牛を象っている)と正反対の方向からこの斝を眺めると、傘を被ったような2本の柱が左右に立ち、胴部中央では、尻尾をくるっと巻いた長胴の饕餮文が、八方睨みをしている様子がはっきり見て取れる。傘へは神霊の気が憑依し、饕餮文は魑魅魍魎(ちみもうりょう)から大切なお酒を守っているのではないだろうか。

重要文化財 饕餮夔鳳文方尊(栄子尊) (とうてつきほうもんそん(えいしそん))

中国 西周時代

(本館所蔵品紹介頁http://www.hakutsuru-museum.org/collection/ 参照)

鳥形卣(大保卣)(とりがたゆう・たいほゆう)

中国 西周時代 通高23.4cm 胴径13.7cm
伝 河南省濬県出土

鴟鴞(しきょう フクロウ)を象った鳥形の卣(酒壺)は多く知られているが、一名鶏卣とも呼ばれるこの形の卣はこれのみである。見開いた大きな丸い目、太く逞しい嘴、顎の下の長い肉垂、そして頭頂から後頭部、背へと垂下する双角あるいは肉冠の類を有する鳥が実際に生息していて、それを神鳥として崇め、造形化したのだろうか。周が興起した陝西省西部の岐山地方に、野鶏の形をした神が降るという伝説の地があると言われている。また、鳥は祖霊の化身とも神の使者とも考えられていた。

繁縟な文様を施さず、簡潔に造形されたこの卣は後頭部に細長い孔が開けられていて、その蓋裏及び器の喉裏辺りに一行三字「大保鋳」の銘があり、主に西周初期の初代武王、第二代成王の時代に活躍した大保の役職、すなわち降神の儀礼を掌る聖職者・召公奭<しょうこうせき 召族は殷(商)とも周とも異なる河南の古族だとする説あり>が作らせた器と推測される。また、尾羽根裏側にも数字らしき陽鋳銘がある。

方座百乳文四耳簋(ほうざひゃくにゅうもんしじき)

中国 西周時代 通高28.cm 口径21.7cm

身の表面に複数の突起を設け、どの面にも観る者を威圧するような迫力を漂わせる。 このような「簋」と呼ばれる器は、穀物を盛るもので、殷時代後期から出現する。本器は、鉢形の器の下に方座(台座)を付属させたような、西周時代に特徴的な造形をとる。身の四方に設けられる耳は、立ち姿の鳥と、それを後頭部からかぶりつく有角の獣から構成されており、獣にはまた牙と鱗状の文様、鳥の嘴には蟬形の文様がそれぞれ施される。実のところ獣の角も二頭の夔龍から成る。全体の一体感と同時に細部表現を一つ一つ分解できる程のきめ細かさがみられる。身や圏台には鳳文や夔鳳文も表される。

一方、方座の外面は、格子のように直文を連ね、その周囲に鳳文や夔龍文を配し、上部中央には、かつて饕餮文と共に表された箆形の文様があり、鳳文が左右からそれに向かって奔走するかのような様子を示す。方座の内側には、銅鐸のような鈴が懸けられており、現在も器を移動させる際にその音色を心地良く響かせる。これも当時の立体造形の好例として位置づけられる。

対となる作品が米国・イエール大学美術館に所蔵される。

白銅海獣葡萄鏡 (はくどうかいじゅうぶどうきょう)

中国 唐時代

(本館所蔵品紹介頁http://www.hakutsuru-museum.org/collection/ 参照)

重要文化財 鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗(ときんりゅうちえんおうそうぎょもんぎんせん)

中国 唐時代 高5.2cm 口径14.5cm

本年が建国から1400年の節目となる唐王朝。300年の歴史を誇る唐が、最も勢いに乗る7世紀後半期に生み出した銀器が本作である。

安定した器形と、精緻な文様が相まって圧倒的な迫力が生み出されている。鎚鍱によって作られており、外面に14個の花形と滴形の凸面の枠が設けられる。枠の中には、植物や唐草文を表す。唐草は、形態を単純化しつつも花弁の折り重なりを表現する花と流麗な茎からなる。また、枠の上下の空間には、鴛鴦、鴨、戴勝などの鳥や鹿、狐など計三十三体の禽獣が植物や石、雲気の間に配され、各々思いのままに行動している。底裏には、華やかな宝相華文が刻まれている。

これら文様の輪郭は全て楔形の彫りを連ねて線とする蹴り彫りという技法で力強く引かれ、また、文様間の空間は小さな粒状の魚々子文で埋め尽くされる。内底には、本体とは別に鎚鍱した銀板をはめ込むが、水面に顔を出す龍のような怪獣を中心として、その周囲を鯰、鴛鴦、鯉が泳ぎ回る様子が表されている。本作品が水と関係することを覗わせ、手や指を洗うために用いられたとも言われる。

類品が、米国のカザスシティ・ネルソン=アトキンズ美術館に所蔵されている。

鍍金犀文銀盒子

唐時代

蓋に犀を表した六花形の盒子である。蓮弁に座す犀は上皮の皺や曲がった鷲鼻形の口先など、写実的に表され、側面は唐時代によく使われる唐草文で飾る。形状や文様の形態・技術的観点から唐時代末期~五代とされる作品である。中国美術のなかで犀のモティーフはさほど多くないが、例として前漢時代の盛酒器「錯金銀雲紋銅犀尊」(中国国家博物館所蔵)が写実的に象(かたど)られたものが知られている。また唐時代の影響を色濃く残す正倉院宝物の平螺鈿背円鏡には、花弁に囲まれた犀の姿がみられる。おなじく正倉院宝物には、ペルシアを源流とする連珠文内で向き合う犀文を織り出した絹織物が所蔵される。

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