展覧会

2016年 秋季展

新館

ペルシヤ絨毯の美 ~世界に伝播する文様~

サーサーン朝ペルシアの美術は、正倉院宝物などにみるとおり、中国、唐時代の美術を通じて、日本の美術にも影響を与えています。時空を超えて古典的な構成要素として受け継がれた文様やデザインをみるとき、その伝播する力を感じずにはいられません。

今回は当館の近代ペルシア絨毯を中心に、世界に伝播した文様とデザインを捉えてみます。美しく彩られた絨毯の画にサーサーン朝美術、中国美術、イスラーム美術など、異なる起源や形を共有する奥深い文様世界を愉しみたいと思います。

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主な展示品

ドロクシ、ペルシア東部

20世紀初期 180×125cm

動物相対文と呼ばれる向き合う動物の意匠は、しばしば生命樹のモティーフとともに描かれる。ここではライオン・馬・孔雀・猿など、一対ずつ十種の動物が表されている。中央下に花瓶を配し、生命樹の枝が左右に伸びて全体を覆い尽くす図はイスラームの楽園思想の表現にもよく使用されるものであるが、樹や柱を中心に左右対称にした動物の姿はサーサーン朝ペルシア文化の影響を強く受けた正倉院宝物の「裂(きれ)」にもみられる。ライオンも古代の意匠のひとつであり、伝統的デザインと文様を受け継ぐ絨毯といえるだろう。

絵画的な要素の強い作品であるが、1㎡あたり15万ノットに満たないパイルで描き出されており、織りデザインの綿密さと技術の高さを感じる。

セムナンもしくは、テヘラン、ペルシア北部

20世紀初期 233×162cm

青地のボーダー(主画面外側の縁部分)には躍動的な鹿や豹などが規則的に反復されるが、フィールド(画面中央)は反復のない総柄のデザインとなっている。描かれた木々や地面を自由に設定し、それを境に異なる空間を描く。樹木はひとつの幹に多様多彩な花をつけ、それぞれが生命樹を示すようである。木々の合間には、枝上の巣で餌を待つ雛の姿、首をそらせて上をみる孔雀、草をはむ鹿、多種の鳥・動物の姿も描かれる。こうした豊かな自然と生命を描く画はイスラームにおける楽園思想をもとにするとされている。

その多彩な画面をよくみると、牛に襲いかかる獅子などの動物闘争図も描かれている。動物闘争図は古典的主題として用いられてきたデザインのひとつである。

タブリーズ、ペルシア北西部

1900年頃 303×204cm

大きな円形を絨毯中央に、またコーナー(四隅)を配すメダリオン・アンド・コーナーと呼ばれる形式の絨毯で、「ペルシア絨毯」を象徴するデザインである。また蔓状の文様や細かな草花文様で埋め尽くしたフィールドのなかに、様々な動物が表わされている。

黒地のコーナーには、ドラゴンとフェニックスが描かれるが、図像的に中国で描かれる龍と鳳凰文の姿が取り入れられたものであろう。中東の古典的文様としても、ドラゴンとフェニックスはよく描かれ、ドラゴンは悪、フェニックスが善の象徴とされることが多い。またペルシアの神話では、フェニックス・鳳凰に相当する「スィムルグ」と呼ばれる霊鳥がおり、物語や絵画の題材となっている。

この絨毯のドラゴン・フェニックスの図は、噛(か)み合わんばかりの猛々(たけだけ)しさをみせているが、ボーダーの各円形文様のなかにも、豹や虎におそわれる草食動物など動物闘争図が描かれ、この絨毯の主要テーマを印象づける。

モフタシャム・カシャン、ペルシア中央部

1900年頃 211×133cm

文学の国、ペルシアの絨毯には物語や詩をテーマにした作品が少なくない。

この作品のボーダーは、三重に亘って文字が織り込まれているが、ここにフィールドに描かれた絵に対応するストーリーが記されており、この作品が12世紀末に活躍した詩人、ニザーミが記した『七王妃物語(ハフト・パイカル)』、サーサーン朝、バフラームⅤ世の物語を題材にした作品であることを示す。フィールドの中央を流れる川で場面は二つに分割され、下から上へと場面展開がなされている。下方部は、鷹狩に出た王が羊飼いと出会う場面であり、上方部は王が罪人の処罰を命じる場面となっている。

パイルは1㎡あたり、約80万ノット程度。十分に緻密で、そして正確な織りにより、ボーダーの文字もさることながら、建築物や椅子・馬具、王の冠の装飾まで、絵画的に表現豊かな絨毯となっている。

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