展覧会

2016年 秋季展

本館

大唐王朝展

7世紀から10世紀にかけて中国に一大帝国を築いた唐。その影響は、広く日本や朝鮮半島といった東アジア地域だけでなく、中央アジア、中近東、果てはヨーロッパにまで及んだといわれます。唐時代には、巨大な統治力と東西交易をはじめとした政策による経済力を背景とし、他地域の要素を柔軟に受け入れ、消化することによって前後に類をみない独自の文化が開花しました。唐文化の様相を現代の我々に示してくれるものが美術品です。それらには極めて精緻な作行きがみられ、その集積によって圧倒的な迫力が織り成されています。当白鶴美術館には、銀器や鏡、陶磁器など諸分野に亘り、唐時代作品の本質を端的に表す優品が多く所蔵されております。

本展覧会では、白鶴美術館が誇る、地域と時代を越えて人々を魅了し続けてきた唐王朝の美術品を大公開します。

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主な展示品

白銅海獣葡萄鏡(はくどうかいじゅうぶどうきょう)

中国 唐時代 径21.3cm

銀色に輝く上質の、恐らく蠟型鋳造に拠る青銅鏡。海獣とは海や沙漠の彼方の遠隔地から中国に齎された動物のことで、狻猊(さんげい)とも呼称され、中東アジアに棲息していたライオン(獅子)がモデルとされている。鏡背面を見ると、鈕が半球形ではなく伏獣形で、内・外区を隔てていた鋸歯文帯が消え替わりに連珠文帯が現れ、更に内外区の葡萄の房の中に柘榴果が交じるなど新しい要素を含む一方、隋・唐初期に見られた銘文帯の名残を伴う、初唐後半期頃の鏡である。内区は3方向へU字形に張り出した葡萄唐草の蔓の内と外に1頭ずつ計6頭の狻猊が表され、伏獣形鈕の鼻先にいる鬣(たてがみ)豊かな狻猊の右後ろ足に注目すると、ネコ科特有の出し入れ可能な鋭い爪が3本飛び出している。外区では葡萄唐草の中を鴛鴦、鵲、狻猊、天馬、麒麟など、5羽5頭の瑞鳥瑞獣が交互に左回りに廻る。

鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗(ときんりゅうちえんおうそうぎょもんぎんせん)

重要文化財
中国 唐時代 高5.2cm 径14.5cm

唐時代銀器の白眉たる作品。用途は不明であるが、フィンガーボールのように用いられたのではないかとも言われる。作行きが極めて精緻で、胴部に14の花弁形と宝珠形の曲面が見事に打ち出され、対葉華文(たいようかもん)で縁取られた花弁内に宝相華唐草文、宝珠形内に一茎の草花文を配する。その上下部にわずか1cmほどの禽獣(鴛鴦、鴨、鷺、戴勝〔ヤツガシラ〕、雉、雌雄の鹿、兎など19羽14頭)や蝶・蜻蛉・草花・岩・石・花雲文、また圏台・底裏には宝相華文が、いずれも蹴り彫りと呼ばれる技法で表される。更に、これらの図像の間の空間も横方向にびっしりと打たれた魚々子文(ななこもん)で埋め尽くされている。内底には龍頭を中心に鴛鴦・鯰・鱗のはっきりした魚が泳ぐ霊池を半肉彫り風に鎚起(ついき)した鍍金銀板が接合されている。

画図讃文(がずさんもん)巻第二七

重要文化財
中国 唐時代 25.6×556.0cm

もと絵巻と一具であり、その説明書きの巻と考えられる。唐時代の絵巻物がほとんど現存しない中にあって、その様子を覗わせる貴重な作品である。内容は、仏教説話と『浄住子浄行法』(南齊・蕭子良著、永明8年[480])を組み合わせたもの。そのうち説話は、インドや中国における仏塔や仏像に纏わる奇瑞譚で、唐時代の『大唐西域記』や『集神州三宝感通録』、『釈迦方志』等から抜粋したものと考えられ、『画図讃文』そのものは南山律師・道宣の一派によって制作されたと推測される。巻第二六が大東急記念文庫に所蔵され、他に断簡が散在する。当初は絵巻部分を含めておよそ三〇巻から成っていたと考えられ、在家信者の仏教実践のためのテキストであったと推測される。書体は初唐の陸柬之のそれに近いと言われ、類似した内容を描く絵画は敦煌莫高窟第323窟(初唐時代)に残っている。成立年代は7世紀後半であろう。

唐三彩鳳凰首瓶(とうさんさいほうしゅへい)

中国 唐時代 高35.6cm

白い胎土に鮮やかな色彩。唐三彩の魅力はこの発色にあるといってよい。三彩とは「多色」という意味で、特定の三色を示すものではないが、緑・紺・茶を基調とするようだ。各色塗り分けられた印象が強いが、この作品の場合はやわらかに混じりあう釉色の美しさが特徴である。

ゆったりとした胴部に貼り付けられた浮彫の鳳凰は両羽を高く上げ、胸をそらして立つ。この図は中国、唐時代の鏡や日本、天平時代の宝物庫である正倉院の裂などにもみられる形式である。

鳥形を象る口部、頸部に付けられたリング形などは、中央アジアやペルシアの銀器の影響を受けたものとされ、まさにシルクロードの美術という名に相応しい器であるとみなされよう。なお、この作品は実用品ではなく、明器、すなわち副葬品としてつくられたものと考えられる。

高野大師行状図画 巻二(部分)「勅許入唐」

重要文化財
日本 鎌倉時代 31.5×1284.0cm

平安初期の僧、弘法大師空海の生涯を描いた作品である。密教の伝道者であり三筆としても名高い空海は桓武天皇の勅命を得て入唐しているが、この場面は遣唐使船による往路を描く。

当時の遣唐使船の形状は明らかになっていないが、平安末期に描かれた「吉備大臣入唐絵巻」(ボストン美術館蔵)や「東征伝絵巻」(鎌倉時代 重要文化財)などの絵巻描かれた遣唐使船も、ここにみるような朱と白の船体に楼閣のような船室と二本の帆柱を特徴としている。

画中、船室屋上に座す僧侶が空海であろう。海上の波は比較的穏やかであるが、よくみれば船の周りには暗雲が迫っている。この後、海難のため、通常「三千里」といわれる船旅は「三千七百里」におよび、福州(福建省)まで流されるのである。

銀製鍍金花文簪(ぎんせいときんかもんかんざし)一対

中国 唐時代 長33.0/32.7cm

銀板に花文を透彫りにした豪華な簪である。板が薄いため鏨(たがね)で描かれた線が裏にも映るが、裏に彫線や鍍金などはなく、表裏が明確である。

壁画、唐三彩の女性俑などをみると、唐時代女性は様々な髪型をしていたことがわかるが、ひとことでいえば、大きく結い上げるスタイルが流行っていたようだ。このようなボリュームのある髪型に相応しい装身具が女性のファッションを彩っている。この作品は左右に挿すものとして作られたためであろうか。一対が反転した形となっている。華やかな唐時代女性に相応しい髪飾りである。

唐三彩荷葉飛雁文盤(とうさんさいかようひがんもんばん)

中国 唐時代 径28.8cm

くっきりとした緑・茶・紺の各色が鮮やかに蓮・霊芝雲・雁・雲を描き出している。雁の羽も緑・茶・藍・白の四色に塗り分けられ、少ない配色ながら鮮やかで華やかな文様となっている。

器形は、獣脚で、側面の立ち上がりが低い。唐三彩の盤として典型的な形をとる。平らな底面に明確に引かれた画の各彫線も、唐三彩で使用されている流れやすい鉛釉の拡散を留めるに適した構造・技法である。なお、茶色地部の白点は染物の蝋纈(ろうけち:蝋による染止めを施した技法)に通じる技法ともいわれ、にじんだような輪郭が柔らかな斑点を描きだす。器の構造・彩色方法、ともにこの美しい発色の釉薬を濁りなく鮮やかにみせる工夫が随所にみられ、器の特徴となっている。

花鳥文木瓜形銀小盤(かちょうもんもっこうがたぎんしょうばん)

中国 唐時代 口径15.2×9.6cm 高3.2cm

四曲に打ち出した木瓜形の銀器。薄手の銀板を用い、文様が大らかであるため、唐時代後半期の9世紀の作になると思われる。器内面は、生命力溢れるぷっくりとした花と葉、リズム感のある茎から構成される植物文と連珠文、魚々子でびっしりと埋め尽くされ、また内底にはインコのような頭を持った尾の長いツガイの鳥も表される。文様の輪郭は蹴彫りによって力強く引かれる。外面には、四面にそれぞれ一まとまりの植物を作るのみで線刻も内面に比べて弱々しい。別に溶接した高台も連珠文を入れるのみで極めてシンプルに仕上げられる。

江蘇省鎮江市甘露寺塔から出土した「銀迦陵頻伽雲鶴文槨」などと同様に、執拗なまでの細かさを追求する時代よりも後の時期に制作され、技法の単純化と制作の効率化を示し、また鷹揚な世界観を体現する優品である。

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