展覧会 2015年秋季展

本館

酒器と神獣~神、人を繋ぐ美術~

人づき合いのツールとして今日も大活躍のお酒。
その中国での起源は、5000年以上も前にさかのぼるとも言われます。

しかし、古く、中国においてお酒が媒介の役割を果たしたのは、人と人の間だけでなく、人と神の間においてもでした。
そのことを象徴するのが、現在、美術品として鑑賞されている青銅器や銀器等の酒器です。

これら古(いにしえ)の酒器には、また天から降りてきて人と神の仲介役をする神獣(龍や鳳凰など)がしばしば表されます。
一方で、昭和初期に開館した当白鶴美術館内に於いても、神獣の一種と捉えられていた鶴や獅子が多く意匠化されています。

本展覧会では、この「酒器」と「神獣」をキーワードとして、
青銅器、銀器といった工芸品を中心とした作品が実際に果たした仲介者としての役割を探り、
白鶴美術館という空間の中でそれらが導く世界へと皆さまを誘います。

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主な展示品

雷文有蓋爵(らいもんゆうがいしゃく)

中国 西周時代 通高24.3cm 口径21.1×9.8cm

三本の脚と二つの柱を持ち、鋬(取っ手)をつけることから、温酒器の爵と同種とされる作品。ただし、胴部が丸く膨らみ、上部の口縁の左右いずれもが流(液体の注ぎ口)となっており、更にその上に両頭形の蓋をかぶせる点で特異である。とりわけ、蓋の両端の動物の顔は印象に強く残るもので、各々つぶらな目に二本の角を持ち、鳥形とも亀形とも羊形とも捉えられる。蓋の中央は窪んだ鞍状で、半環紐(持ち手)をつけると共に、斜行形の雷文を表す。雷文は丸い胴部にもみられ、その上の頸部には渦状の饕餮文が入れられ、また「□隹壺」という銘が刻まれる。

重厚な漆黒の銅地を素地として施文を最小限に留め、バランス良くすっくとした立ち姿はいかにも堂々たるものであるが、蓋の表現と相まってそのことが却って愛らしさを生んでいる。青銅器への尽きない興味を駆り立てる作品である。

なお、同形、同文の青銅器が米国・イエール大学美術館に所蔵される。

象頭兕觥(ぞうとうじこう)

重要文化財
中国 殷時代 通高17.2cm 長20.1cm 伝 河南省安陽殷墟出土

蓋の前面に象の頭をかたどる盛酒器。兕觥の他の例では虎、兎などの形をしたものがある。象は、この時代から既に神獣の一種として表される。本器は、ふっくらとした胴部に緩やかに立ち上がる頸をつけて全体に象を基本とした動物の造形をしつつも、後方の把手とのバランスは実用にも適っている。表面には饕餮や夔龍のほかに虎や兎などの文様が所せましと配され、蓋にも象頭と反対側に動物と人間の特徴を併せ持つ顔が表される。

鋳上がりが極めて良く、この時代の厳格な文様の世界観を読み解く上での好資料といえる。

鳥形卣(大保卣)(とりがたゆう(たいほゆう))

中国 西周時代 通高23.4cm 胴径13.7cm 伝 河南省濬県出土

鴟鴞(しきょう、フクロウ)を象った鳥形の卣(酒壺)は多く知られているが、一名鶏卣とも呼ばれる、この形の卣はこれのみである。見開いた大きな丸い、太く逞しい嘴、顎の下の長い肉垂、そして頭頂から後頭部、背へと垂下する双角あるいは肉冠の類を有する鳥が実際に生息していて、それを神鳥として崇め、造形化したのだろうか。鳥は祖霊の化身とも神の使者とも考えられていた。繁縟な文様を施さず、簡潔に造形されたこの卣は後頭部に細長い孔が開けられていて、その蓋裏及び器の喉裏に「大保鋳」の銘があり、西周初期の初代武王、第二代成王の時代に活躍した大保の役職を担う召公奭(しょうこうせき)が作らせた器と推測される。尾羽根裏側にも数字らしき陽刻銘あり。

鍍金花鳥獣文銀杯(ときんかちょうじゅうもんぎんぱい)

重要文化財
中国 唐時代 高5.4cm 口径7.1cm

腰部に廻らされた大きく力強い連珠文の突帯を境として杯身の上半部が強く外反する丸い口縁の酒杯。蝋付けされた別作りの脚部は凝った形態で、十花からなる浅鉢形の受台を始め、中途には十個の大粒の刻み出しによる連珠文の節を設け、伏せた形を思わせる十弁の花びら様の裾へと変化している。連珠文帯より上部は、十弁に区画された花弁内の草花の中を生き生きと駆け、飛翔し、或いは佇む鳥獣<例えば、虎、猪、鹿、鴨、鴨を襲う猛禽(恐らく隼)、花喰い鶴など>を力強い蹴り彫りによって迫真的に表現し、更に凸帯下部の打ち出された十の花弁内にも飛鳥(中にはヤツガシラもいる)、蝶、草花などが彫り出されている。ほぼ地の全面に魚々子文(ななこもん)を施す。

鳳凰・麒麟図
狩野典信筆(みちのぶ:1730~1790)

江戸時代 後期 各166.5×117.5cm

展示期間9月12日(土)~10月12日(祝・日)

鳳凰・麒麟は龍・亀、とともに中国で「四霊」とされた瑞獣である。鳳凰は天帝の使いであり、また鳥類の長とも称される。これに対し、麒麟は獣類の長とする。いずれも徳の高い為政者とその治世よって姿をあらわす聖獣であるため、その象徴として、ときの為政者を讃える画題となり、また、瑞兆の幻獣としてバリエーション豊かに描かれてきた。

鳳凰は梧桐(あおぎり)に住み、竹の実を食すると伝えられる。そのため、この画にもみられるように、多くの鳳凰図には桐が添う。

麒麟は、鹿の体に牛の尾をした一角獣とされる。この画にも龍を思わせる頭部に二股に分かれた角が一本みえる。典信は、柔らかな繊細な筆さばきと、狩野派に象徴される力強い輪郭線をつかいわけ、鳳凰の優美さと麒麟の雄々しさとを描き出している。

金襴手八仙人図壺

明時代 H53.0cm

「金襴手」とは器面に描かれる金彩の文様から付けられた名称である。この器の上下に赤地の窓になっている部分に金彩が施されていたと思われるが、金が落ちやすいため、既に無文となっている。

主題となる「仙人」は中国の道教において尊ばれた。日本でも、李鉄拐(りてっかい)・呂洞賓(りょどうひん)など、優れた宋・元時代の絵画作品の主題としても伝わってきた。明時代になると文学の影響もあり、先の二人に加えて、張果老(ちょうかろう)・何仙姑(かせんこ)・曹国舅(そうこっきゅう)・藍采和(らんさいか)・鍾離権(しょうりけん)・韓湘子(かんしょうし)が「八仙人」とされる。仙人たちはそれぞれを象徴する持ち物を携えた姿で描かれるが、絵画だけでなく、この作品のような工芸作品においても、吉祥文のひとつとして盛んに描かれるようになった。

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